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インフルエンサーマーケティング効果測定のKPI設計と手順

lit.link Boost編集部公開日: 2026-09-07読了目安: 約12分

「インフルエンサーマーケティングの効果測定をどう設計すればよいか」という相談は、実施後に寄せられることがほとんどです。しかし、効果測定の成否は実施後ではなく、発注前に何を合意していたかでほぼ決まります。投稿が終わってから測り方を考え始めると、比較の基準になる実施前のデータがなく、何と比べればよいのかが分からなくなるためです。

この記事は、企業のマーケティング担当者が、発注前にKPI表を作り、必要な計測を仕込み、報告できる状態を作るための手順をまとめたものです。結論を先に書くと、押さえるべきは3点です。第一に、KPIは認知・検索・送客・購買の4層に分け、層ごとにデータの取得元を決めておくこと。第二に、実施前28日・実施中・終了後28日という区間を基本に置き、商材の購買サイクルに応じて調整すること。第三に、前後の差を因果効果として報告しないことです。

効果測定はKPI表を発注前に合意することから始まる

発注時に決めておくべきなのは、「何をもって成功とするか」ではなく、「どの数値をどこから取り、いつ比べるか」です。ここが曖昧なまま進むと、投稿後に「再生数は伸びたが、それで結局どうなのか」という議論に戻ってしまいます。

KPI表には最低限、次の項目を入れます。

  • 層(認知・検索・送客・購買のどれか)
  • 指標名
  • データの取得元
  • 取得の頻度(日次か週次か)
  • 比較する期間
  • 誰が取得するか(自社かパートナーか)

このうち「データの取得元」と「誰が取得するか」は、社内の承認プロセスでも問われる項目です。稟議に必要な整理は「インフルエンサー施策の提案書と稟議の通し方」(/business/articles/influencer-proposal-ringi)で扱っています。

発注条件に「再生数◯万回」を含める場合、それは露出量に対する条件であり、売上に対する条件ではありません。発注条件とKPIを別の欄に分けて書いておくと、実施後の評価で議論が噛み合いやすくなります。

KPIは認知・検索・送客・購買の4層に分ける

ひとつの指標で全体を評価しようとすると、どの段階に課題があるのかが判別できなくなります。次の4層で置くことをおすすめします。

指標 取得元 取得頻度
認知 再生数、リーチ、再生完了率、保存数 各プラットフォームのインサイト 投稿後に日次で数日、以降は週次
検索 指名クエリの表示回数、クリック数、平均掲載順位 Google Search Console 日次
送客 セッション数、参照元別の流入、商品ページ到達 GA4 日次
購買 注文数、購入金額、アプリインストール、継続率 EC管理画面、アプリ計測、売上台帳、POS 日次または週次

層を分ける利点は、成果が出なかったときに原因の場所を絞り込めることです。認知の数値は伸びたが検索の数値が動いていなければ、動画内での商品名の伝わり方に課題がある可能性が高くなります。検索は伸びたが送客が伸びていなければ、検索結果での自社ページの見え方に課題があります。この切り分け手順は「再生数が伸びても売上が増えないときに確認する10項目」(/business/articles/views-up-sales-flat)で詳しく扱っています。

なお、費用側の指標を置く場合は用語の区別が必要です。再生数に連動して費用が決まる方式は再生数課金(CPV課金)、購入や登録に連動する方式は成果報酬(CPA型)です。両者を同じ表に並べる場合は、費用の発生条件を明記して混同を防いでください。それぞれの仕組みは「再生数課金とは?CPVの計算・保証範囲・契約前の確認点」(/business/articles/view-based-pricing)と「成果報酬型インフルエンサーマーケティングとは?固定費型との違い」(/business/articles/performance-based-pr)で解説しています。

データソースごとに役割と限界を理解する

同じ「クリック数」でも、取得元によって定義が異なります。数値が一致しないことを前提に、どの数値をどの判断に使うかを決めておきます。

データソース 分かること 限界
プラットフォームのインサイト 再生数、リーチ、視聴者属性、離脱位置 自社サイト以降の行動は追えない
Google Search Console 検索クエリ単位の表示回数・クリック・掲載順位 検索数が少ないクエリは匿名化され表示されない
GA4 流入元別のセッション、サイト内の行動、コンバージョン 参照元が取得できない流入が一定割合発生する
EC・アプリの計測 注文、カート追加、インストール、起動 実店舗での購入は含まれない
売上台帳・POS 実際の販売数量、店舗別・チャネル別の内訳 どの接点を経由したかは分からない
SNSアプリ内のブラウザから遷移した流入は、参照元が「direct」に分類されることがあります。そのため、GA4上のSNS経由の流入は、実際より少なく見える可能性があります。UTMパラメータを付けたリンクを使う、遷移先を専用ページにするといった対策を、施策の開始前に決めておいてください。

指名検索数の調べ方

ブランド名や商品名での検索がどう動いたかは、Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで確認します。手順は次のとおりです。

  1. 自社サイトをGoogle Search Consoleに登録し、所有権を確認する(施策開始より前に済ませる)
  2. 検索パフォーマンスレポートを開き、期間を施策の前後を含む範囲に設定する
  3. 「クエリ」タブでフィルタをかけ、ブランド名・商品名・その表記ゆれ(カタカナ、英字、略称)を含むクエリを抽出する
  4. 表示回数とクリック数を日別に書き出し、投稿日を基準に前後を並べる

表記ゆれの抽出漏れを防ぐため、対象とする語のリストを事前に作っておきます。なお、検索数が極端に少ないクエリは匿名化されて表示されないため、合計値と個別クエリの合計は一致しません。指名検索を伸ばす設計そのものは「指名検索を増やすための施策設計」(/business/articles/branded-search-growth)で扱っています。

計測期間は前28日・実施中・後28日を基本に置く

比較の基準となる期間を、施策の開始前に確保しておくことが重要です。

区間 期間の目安 用途
ベースライン 実施前28日 通常時の水準を把握する
実施期間 投稿日から施策終了まで 実施中の変化を見る
観測期間 終了後28日 遅れて現れる反応を拾う

28日という区切りは、曜日の影響を平準化しやすいためです。7日単位で区切ると、祝日や給料日の位置が期間ごとに偏る影響を受けにくくなります。

購買サイクルが長い商材(高単価、比較検討が必要、法人向けなど)では、観測期間を1か月以上に延ばします。逆に、単価が低く即時に購入されやすい商材では、投稿直後の数日に反応が集中するため、日次で細かく取ることが有効です。自社で「初回接触から購入までの平均日数」が取れている場合は、その日数を観測期間の基準にします。

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併行施策を記録し、Google トレンドは補助にとどめる

同じ期間には、インフルエンサー施策以外の要素も動いています。次の項目を一覧にして記録しておいてください。

  • 広告出稿(媒体、期間、予算規模)
  • メール・アプリ通知の配信
  • 値引き、クーポン、セール
  • 店頭施策、配荷の変化
  • 他媒体での露出(テレビ、記事、他社の言及)
  • 季節要因、天候、競合の動き

この記録があると、数値が動いた理由を説明する際の材料になります。逆に記録がないと、「効果があった」も「なかった」も同じ程度に根拠が薄い主張になってしまいます。

Google トレンドは、検索の関心度の推移を相対値(期間内の最大値を100とする指数)で示すツールです。実数ではないため、単独で成果を示す根拠にはなりません。Google Search Consoleで取れる自社の表示回数を主指標に置き、Google トレンドは「市場全体の関心が同時期に動いていなかったか」を確認する補助として使うのが適した位置づけです。

施策の前後で売上が増えたことは、その施策が売上を増やしたことの証明にはなりません。前後比較は因果効果と同じではない、という点をレポートに明記してください。断定を避けた表現にしておくほうが、次回以降の測定設計に対する社内の理解も得やすくなります。

UTMとクロスドメインを施策開始前に設定する

送客の数値を取りこぼさないために、リンク側の設定を先に整えます。

  1. UTMパラメータの命名規則を決める:utm_source(プラットフォーム名)、utm_medium(influencer など施策種別)、utm_campaign(施策名)、utm_content(クリエイター識別子)を、施策をまたいで同じ書式にします
  2. クリエイター単位で識別できるようにする:utm_contentにクリエイターごとの値を入れておくと、後から誰の投稿からの流入かを分けて見られます
  3. ドメインをまたぐ場合はクロスドメイン計測を設定する:自社サイトから外部のECカートへ遷移する構成では、設定がないとセッションが分断され、購買が別の流入として計上されます
  4. リンクが使えない配信面での代替を決める:プロフィール欄のリンクのみが導線になる場合、リンク集ページを経由させて計測点を作る、専用ページを用意するといった方法があります
  5. 短縮URLを使う場合は転送後もパラメータが維持されるかを確認する

これらは投稿が始まってからでは修正できません。発注のスケジュールに「計測設定の完了日」を明示的に組み込んでおくことをおすすめします。

lit.link Boost!では、再生数に応じた費用でクリエイターのショート動画PRを発注できます。クリエイターごとの再生数が確認できるため、utm_contentによる流入の識別と組み合わせると、認知から送客までを分けて見る設計が作りやすくなります。

レポートは「わかったこと・わからなかったこと・次の打ち手」で書く

数値を並べただけのレポートは、次の判断に使えません。次の3つに整理してください。

項目 書く内容
わかったこと 数値として観測できた変化。取得元と期間を併記する
わからなかったこと 計測できなかった範囲、他要因と切り分けられなかった部分
次の打ち手 どの段階を変えるか、次回に追加で測るもの

「わからなかったこと」を書くことに抵抗があるかもしれませんが、この欄があることで、次回の測定設計が改善されていきます。たとえば「実店舗での購入は追えなかった」と記録しておけば、次回は店舗別の販売数量を取得する手配を先に進められます。

まとめ

インフルエンサーマーケティングの効果測定は、発注前にKPI表を合意し、計測を仕込むところから始まります。KPIは認知・検索・送客・購買の4層に分け、層ごとにデータの取得元と取得頻度を決めてください。指名検索の動きはGoogle Search Consoleで日別に確認でき、Google トレンドは相対値のため補助指標として扱います。

計測期間は実施前28日・実施中・終了後28日を基本に、商材の購買サイクルに応じて調整します。同時期に走っていた施策を記録し、前後の差を因果効果として断定しないこと。レポートは「わかったこと」「わからなかったこと」「次の打ち手」に整理すること。この2点が、社内で信頼される報告と、次回の改善につながります。

次に読む記事として、再生数が伸びたのに売上が動かない場合の切り分けは「再生数が伸びても売上が増えないときに確認する10項目」(/business/articles/views-up-sales-flat)、検索側の設計は「指名検索を増やすための施策設計」(/business/articles/branded-search-growth)をご覧ください。

参考

  • Google Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート」 https://support.google.com/webmasters/answer/7576553
  • Google Search Console ヘルプ「サイトの所有権を確認する」 https://support.google.com/webmasters/answer/9008080
  • Google アナリティクス ヘルプ「[GA4] トラフィック獲得レポート」 https://support.google.com/analytics/answer/9143382
  • Google アナリティクス ヘルプ「[GA4] クロスドメイン測定を設定する」 https://support.google.com/analytics/answer/10071811
  • Google アナリティクス ヘルプ「カスタム URL でキャンペーン データを収集する」 https://support.google.com/analytics/answer/10917952
  • Google トレンド ヘルプ「Google トレンドのデータについて」 https://support.google.com/trends/answer/4365533

よくある質問

インフルエンサーマーケティングのKPIは何を置けばよいですか?

目的の階層に応じて、認知(再生数・リーチ・再生完了率)、検索(指名クエリの表示回数・クリック)、送客(サイト流入・商品ページ到達)、購買(注文数・アプリインストール・継続率)の4層に分けて置きます。ひとつの指標にまとめないことが要点です。

指名検索数はどうやって調べますか?

自社サイトをGoogle Search Consoleに登録し、検索パフォーマンスレポートでブランド名や商品名を含むクエリを絞り込むと、表示回数とクリック数を日別に確認できます。Google トレンドは実数ではなく相対値のため、補助的な参考にとどめます。

効果測定の期間はどれくらい取ればよいですか?

実施前28日をベースライン、実施期間中、終了後28日という3区間を基本に置き、商材の購買サイクルに応じて後半を延ばします。検討期間の長い商材では、終了後の観測期間を1か月以上確保する設計が現実的です。

施策の前後で売上が増えれば効果があったと言えますか?

言えません。同じ期間には季節性、他の広告、値引き、配荷の変化なども動いています。前後の差は目安として扱い、並行して実施していた施策を記録したうえで、断定を避けた表現で報告することをおすすめします。

レポートには何を書けばよいですか?

数値の羅列ではなく、「わかったこと」「わからなかったこと」「次の打ち手」の3つに整理します。特に、計測できなかった範囲を明示しておくと、次回の測定設計を改善する材料になります。

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