PR案件とは?企業案件の種類・流れ・報酬の決まり方を解説
「PR案件」「企業案件」という言葉は、クリエイター側の発信で目にすることが多い一方、発注する企業側から見た全体像がまとまった情報は多くありません。この記事は、これからクリエイターへの依頼を検討する企業のマーケティング担当者に向けて、PR案件とは何を指すのか、どのような流れで進み、報酬はどう決まるのかを整理したものです。
先に結論を書きます。PR案件とは、企業がクリエイターに対価を支払い、自社の商品・サービスを紹介する投稿を依頼する取引の総称です。対価の払い方によって投稿依頼・ギフティング・成果報酬・アンバサダーといった種類に分かれ、報酬額はフォロワー数だけで決まるものではなく、投稿形式・本数・掲載期間・二次利用の範囲といった条件の積み上げで決まります。そして、いずれの形態であっても、広告であることが一般消費者に分かる表示が必要です。
この記事では、種類の整理、依頼から検収までの流れ、報酬が決まる条件、企業の総費用との違い、PR表記の義務、そしてよくあるトラブルと詐欺的な案件募集の見分け方までを扱います。相場については、条件で変動するため単価表は掲載せず、「見積もりで確認する項目」として整理します。
PR案件(企業案件)とは、投稿を依頼する取引の総称
PR案件とは、企業がクリエイター・インフルエンサーに依頼し、対価を伴って自社の商品やサービスを紹介してもらう取引全般を指す呼び方です。クリエイター側では「企業案件」と呼ばれることが多く、指しているものはほぼ同じです。
ここでの「対価」は現金に限りません。商品の無償提供、サービスの無料利用、イベント招待なども対価に含まれます。この点は表示義務と直結するため、企業側が最初に押さえておくべきポイントです。
PR案件の主な種類と、それぞれの費用の発生の仕方
| 種類 | 依頼内容 | 費用の発生の仕方 | 主に向く目的 |
|---|---|---|---|
| 投稿依頼(固定報酬型) | 指定した内容・形式で投稿してもらう | 投稿1本あたりの固定額 | 公開日を確定させたい施策 |
| ギフティング | 商品を無償提供し、投稿を依頼または任意で促す | 商品原価+送料+管理工数 | 口コミの母数づくり |
| 再生数課金(CPV課金) | 投稿後の再生数に応じて費用が決まる | 再生数×単価(上限予算を設定する場合が多い) | 露出量と費用を連動させたい施策 |
| 成果報酬(CPA型) | 購入・会員登録などの成果に応じて費用が決まる | 成果件数×単価 | 計測可能な獲得が目的の施策 |
| アンバサダー契約 | 一定期間、継続的に発信してもらう | 期間契約の固定費+活動に応じた費用 | 中長期のブランド理解 |
用語として混同されやすいのが、再生数課金と成果報酬です。どちらも「成果連動」と総称されることがありますが、費用が連動する対象が違います。再生数課金は再生という露出量に、成果報酬(CPA型)は購入や登録といった最終行動に連動します。予算の読みやすさも、計測の難易度も異なるため、社内資料では書き分けてください。再生数課金の契約条件の詰め方は再生数課金とは?CPVの計算・保証範囲・契約前の確認点で扱っています。
依頼から検収までの流れ
実務では、おおむね次の順序で進みます。
- 目的とKPIを決める(認知か、検討の後押しか、獲得か)
- 起用するクリエイターの候補を選定し、過去投稿とフォロワー層を確認する
- 条件を提示して打診する(媒体・形式・本数・公開時期・二次利用・報酬)
- 発注書または契約書を取り交わす
- 構成案・台本を確認する(表現の可否、訴求の線引き、薬機法などの表示上の制約)
- 初稿を確認し、修正回数の範囲内でフィードバックする
- PR表記を確認したうえで公開する
- 一定期間後に投稿インサイトを共有してもらい、検収・支払いを行う
つまずきやすいのは3と5です。3の打診時点で二次利用の範囲を伝えていないと、後から広告配信や自社サイト掲載に使えないことが分かり、追加の交渉が必要になります。5では、クリエイターの表現の自然さと、企業として避けたい表現の線引きの折り合いをつける必要があります。修正の指示が細かすぎると、クリエイターらしい語り口が失われ、視聴者の反応も落ちやすくなります。伝えるべきは「必ず入れる要素」と「言ってはいけない表現」に絞り、それ以外は任せる形が取りやすいでしょう。
打診の具体的な文面や進め方はインフルエンサーへのDM依頼の記事、TikTokクリエイターへの依頼手順はTikTokインフルエンサーへの依頼方法の記事で解説しています。
報酬はフォロワー数だけでは決まらない
「フォロワー1人あたり◯円」という計算式が広く紹介されていますが、実際の見積もりはこれだけで決まりません。同じフォロワー数でも、次の条件によって金額は変わります。
| 確認する項目 | 金額に影響する理由 |
|---|---|
| 媒体と投稿形式 | ショート動画、静止画、ストーリーズ、ライブ配信で制作工数が異なる |
| 本数と公開スケジュール | 複数本のセット依頼か、単発かで単価が変わる |
| 掲載期間 | 一定期間後に削除する条件か、恒久掲載かで扱いが変わる |
| 二次利用の範囲 | 広告配信・自社サイト掲載・店頭利用などの利用先と期間 |
| 撮影拘束 | スタジオ撮影やイベント登壇など、拘束時間を伴うか |
| 独占条件 | 同ジャンルの競合案件を受けない期間を設けるか |
| 修正回数 | 何回まで修正に応じるか |
| 出演者の範囲 | 本人のみか、家族・ペットなど第三者の出演を含むか |
費用体系ごとの整理は、インフルエンサー費用相場を扱った記事にまとめています。
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予算を組むときに見落とされやすいのが、この差です。クリエイターの手元に渡る報酬額と、企業が負担する総額は一致しません。
企業側の総費用には、クリエイターへの報酬に加えて、仲介する会社やプラットフォームの手数料、企画・ディレクション費、提供する商品の原価と送料、撮影が必要な場合の撮影費、そして社内担当者の工数が含まれます。また、個人のクリエイターに直接支払う場合は、報酬の種類によって源泉徴収の要否が変わり、インボイス制度への対応も必要になります。処理の詳細は国税庁の案内を確認したうえで、経理部門と事前にすり合わせてください。
社内の稟議では、クリエイターへの報酬だけを記載すると、後から手数料や商品原価が追加で必要になり、再申請が発生します。最初から総費用ベースで組み立てておくほうが確実です。lit.link Boost!では、再生数に応じた費用でクリエイターのショート動画PRを発注できます。
PR表記は景品表示法上の義務
事業者が表示内容の決定に関与しているにもかかわらず、一般消費者がそれを事業者の表示だと判別することが困難な表示は、景品表示法第5条第3号にもとづく指定告示により不当表示として規制されています。この告示は2023年10月1日に施行され、一般に「ステマ規制」と呼ばれています。規制の対象となるのは表示を行った事業者であり、クリエイター側ではなく発注した企業が責任を負う点に注意が必要です。
運用上は、投稿の冒頭で分かる位置に「PR」「広告」「タイアップ」といった表示を入れることに加え、各プラットフォームが用意するタイアップ投稿の機能を併用する形が一般的です。Instagramにはブランドコンテンツ(タイアップ投稿ラベル)、TikTokにはブランドコンテンツ表示の設定があり、それぞれ公式ヘルプに手順が案内されています。プラットフォームの機能を使っただけで表示義務を満たすとは限らないため、表記の文言と位置も併せて確認してください。
判断基準や具体的な運用は消費者庁の運用基準が一次情報です。詳しい解説はステマ規制の記事で扱っています。
よくあるトラブルと、詐欺的な案件募集の見分け方
企業側で起きやすいトラブルは、条件の書面化不足に起因するものが大半です。公開日が動く、二次利用ができない、投稿が予告なく削除される、想定と異なる表現で紹介される。いずれも、事前に発注書へ記載しておけば防げる範囲のものです。加えて、フォロワーの実態が伴わないアカウントの起用や、他社案件と近接した時期の投稿によるブランドイメージの混線も、選定段階の確認で減らせます。
一方で、クリエイター側が巻き込まれる詐欺的な案件募集も報告されています。企業の担当者としても、自社を騙る偽アカウントによる被害を避けるために特徴を知っておく価値があります。典型的なのは、企業名や担当者の所属が確認できない、契約書を交わさずDMだけで進行しようとする、投稿の前に本人へ商品購入や立て替え払いを求める、報酬の受け取りに別途手数料の振込を要求する、暗号資産や個人口座での送金を指定する、といった進め方です。
自社が発注する側であれば、公式ドメインのメールアドレスから連絡する、会社概要と担当者名を明示する、必ず発注書を発行する、金銭の立て替えを求めないという運用を徹底することで、クリエイター側の不安を減らし、打診の返信率も上げやすくなります。消費者トラブルの相談窓口としては、消費者庁の消費者ホットライン(188)や国民生活センターの案内が公開されています。
まとめ
PR案件(企業案件)は、企業がクリエイターに対価を支払って投稿を依頼する取引の総称で、投稿依頼・ギフティング・再生数課金・成果報酬・アンバサダーといった形態に分かれます。対価は現金に限らず、商品の無償提供やサービス利用も含まれます。
報酬額はフォロワー数だけでは決まらず、媒体・形式・本数・掲載期間・二次利用・撮影拘束・独占条件などの積み上げで変わります。根拠のない単価表に頼らず、条件を揃えた相見積もりで確認してください。また、クリエイターが受け取る報酬と企業の総費用は別物であり、稟議は総費用ベースで組み立てる必要があります。そして、いずれの形態でも景品表示法にもとづくPR表記の確認は欠かせません。
次に読む記事として、施策全体の進め方を確認したい方にはインフルエンサーマーケティングとは?仕組み・メリット・始め方を解説を、表示義務の詳細を確認したい方にはステマ規制の記事をおすすめします。
参考
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
- 消費者庁「景品表示法」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
- 消費者庁「消費者ホットライン(188)」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_009/
- 国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/
- Instagramヘルプセンター「ブランドコンテンツについて」 https://help.instagram.com/116947042301556
- TikTokヘルプセンター「ブランドコンテンツ表示」 https://support.tiktok.com/
- 国税庁「インボイス制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm
- 国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
よくある質問
PR案件(企業案件)とは何ですか?
企業がクリエイターやインフルエンサーに対価を支払い、自社の商品・サービスを紹介する投稿を依頼する取引の総称です。投稿依頼、ギフティング、成果報酬型、アンバサダー契約などの形態があり、いずれも広告であることを表示する必要があります。
PR案件の相場はいくらですか?
一律の相場は存在しません。媒体、投稿形式、本数、掲載期間、二次利用の範囲、撮影拘束の有無などの条件で金額が変わります。フォロワー数に単価を掛けた単純な相場表は判断材料にしにくいため、条件を揃えた相見積もりで確認してください。
クリエイターに支払う報酬と、企業が負担する総費用は同じですか?
異なります。クリエイターへの報酬に加えて、仲介する会社の手数料、企画・ディレクション費、商品原価と送料、撮影費、社内工数などが発生します。予算を組むときは総費用で見積もる必要があります。
PR表記は必ず必要ですか?
事業者が表示内容に関与しているにもかかわらず、一般消費者がそれを判別できない表示は、景品表示法第5条第3号の指定告示により不当表示として規制されます(2023年10月1日施行)。金銭の授受がなくても該当し得るため、無償提供の場合も含めて表示の要否を確認してください。
個人のインフルエンサーに直接依頼してもよいですか?
可能です。ただし契約書や発注書で、投稿内容、公開日、掲載期間、二次利用の範囲、修正回数、支払条件、PR表記の方法を書面化しておく必要があります。源泉徴収やインボイス制度への対応も事前に経理部門と確認してください。
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