D2Cマーケティングとは?手法の全体像とショート動画の使いどころ
自社ECで商品を販売するD2Cブランドで、「何から手をつければよいか」「SNSや広告、CRMをどう組み合わせればよいか」を整理したい。そんな企業のマーケティング担当者に向けた記事です。
先に結論を書きます。D2Cマーケティングは、自社ECを軸に、SNS運用・広告・CRM・コミュニティ・クリエイターPRといった手法を「新規獲得」「購入転換」「継続購入」の段階に割り当てて設計するのが基本です。ショート動画は万能の手段ではなく、主に新規の人に知ってもらう段階と、検討中の人に使用感を見せる段階で役割を持ちます。どの段階の課題を解くのかを決めてから使うと、成果の見方も明確になります。
この記事では、D2Cの定義、6つの手法の役割、顧客接点の段階ごとのショート動画の使いどころ、効果の見方、始める順番を扱います。食品ブランドに特化した投稿フォーマットや発送の注意点は食品・D2Cのショート動画PRで詳しく扱っているため、本記事は業種を問わない全体像に絞ります。
D2Cとはブランドが顧客に直接販売し、関係を自社で持つモデル
D2CはDirect to Consumerの略です。メーカーやブランドが、卸や小売店を介さずに自社のECサイトなどを通じて消費者へ直接商品を販売するビジネスモデルを指します。
販売経路の違いだけでなく、「顧客との関係を自社で持つ」ことに意味がある点が特徴です。小売店経由の販売では、誰が買ったのか、なぜ買ったのかを把握しにくくなります。自社で販売すれば、購入履歴や問い合わせ、レビューといった顧客の情報が手元に残り、商品改善やコミュニケーションに活かせます。
一方で、集客を自社で担う必要があります。小売店の棚に並べてもらえれば店頭で商品を見つけてもらえますが、自社ECでは、顧客にサイトへ来てもらう理由を自社でつくらなければなりません。D2Cマーケティングの課題の多くは、この集客と、購入後の関係づくりに集約されます。
D2Cマーケティングの手法は6つに分けて役割を整理する
D2Cで使われる主な手法を、役割ごとに整理します。
| 手法 | 主な役割 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自社EC | 販売・顧客情報の蓄積 | 購入データと顧客接点を自社で持てる | 集客を自社で担う必要がある |
| SNS運用(自社アカウント) | ブランドの世界観の発信、既存顧客との接点 | 継続すれば資産になる | 成果が出るまで時間がかかり、運用工数が継続する |
| 広告(運用型) | 新規獲得、再訪の促進 | 予算で配信量を調整でき、効果検証が早い | 配信を止めれば露出も止まる。素材の継続供給が要る |
| CRM(メール・LINE等) | 継続購入、休眠顧客の掘り起こし | 既存顧客に低コストで届く | 配信頻度や内容を誤ると解除につながる |
| コミュニティ | 熱量の高い顧客との関係強化 | 顧客の声を商品開発に活かせる | 運営に継続的な工数がかかる |
| クリエイターPR | 第三者の視点による認知と信頼の獲得 | 企業発信とは異なる受け止められ方が期待でき、素材にもなる | PR表記が必要。依頼・確認の工程がある |
これらは順番に全部やる必要はありません。自社の課題が「知られていない」のか「知られているが買われない」のか「買われるが続かない」のかによって、優先する手法が変わります。
なお、自社ECで販売する場合は、通信販売として特定商取引法に基づく表示(事業者名・返品条件など)が必要です。また、CRMで顧客の連絡先や購入履歴を扱う場合は、個人情報保護法に沿った利用目的の明示と管理が前提になります。いずれも詳細は所管官庁の公開情報で確認してください。
CRMとコミュニティは購入後の声を集める役割を持つ
D2Cでは新規獲得に目が向きがちですが、購入した人との関係を続けるCRMとコミュニティは、循環を回すうえで欠かせない手法です。メールやLINEなどのCRMでは、購入直後の使い方の案内、使い切りの時期に合わせた再購入の案内、しばらく購入のない顧客への情報提供などを行います。
コミュニティは、商品を気に入っている顧客どうしや、顧客とブランドが交流する場です。顧客の声を直接聞けるため、商品改善や新商品の企画のヒントが得やすくなります。また、そこで語られた使い方や感想は、新規の人に向けたコミュニケーションの切り口にもなります。いずれも運営の手間が継続的にかかるため、最初から大きく作らず、少人数・低頻度から始めるのが現実的です。
SNSは「どの媒体で顧客が情報を探しているか」から選ぶ
D2CブランドのSNS選びは、媒体の人気ではなく、自社の顧客がどこで情報を探しているかで決めます。使用シーンや使用前後の様子を動画で見せやすい商材はTikTokやInstagramのリール、写真で世界観を伝える商材はInstagramのフィード、詳しい比較や解説が必要な商材はYouTubeが候補になります。ショート動画の媒体ごとの特徴はショート動画マーケティングの始め方で整理しています。
ショート動画は顧客接点の段階ごとに役割が変わる
ショート動画をD2Cマーケティングに取り入れるときは、「どの段階の顧客に、何を伝えるか」を先に決めます。段階ごとの使いどころを整理します。
| 段階 | 顧客の状態 | ショート動画で伝えること | 主な担い手 |
|---|---|---|---|
| 認知 | ブランドを知らない | 商品が解決する悩みや使う場面 | クリエイターPR、広告 |
| 検討 | 知っているが迷っている | 実際の使用感、サイズ感、使い方 | クリエイターPR、自社アカウント |
| 購入 | 購入を決めかけている | 購入先への導線、よくある疑問への回答 | 広告(再訪向け)、自社EC内の動画 |
| 継続 | 購入済み | 使い方のコツ、別の使い方、顧客の投稿の紹介 | 自社アカウント、CRM |
認知と検討の段階では第三者の視点が役立つ
まだブランドを知らない人に対しては、企業が自ら「良い商品です」と伝えるより、実際に使った人の視点で使用場面を見せるほうが、見る理由をつくりやすくなります。クリエイターPRは、この段階で役割を持つ手法です。複数のクリエイターに依頼すれば、どの切り口の動画が反応を得やすいかの手がかりも得られます。
検討の段階では、サイズ感・質感・使い方など、写真や文章では伝わりにくい情報を動画で補えます。消費者が自発的に投稿したUGCがあれば、それも検討材料になります。UGCの定義や、自然発生した投稿と依頼した投稿の区別はUGCとは?企業マーケティングでの活用手順で解説しています。
新商品の発売時は投稿の本数と時期をそろえる
D2Cブランドで新商品を発売する場合、発売前後の短い期間に投稿が集まっているかどうかで、商品名で検索した人が目にする情報量が変わります。発売時のショート動画・UGCの設計は新商品PRの進め方で扱っています。
ショート動画の成果は「指名検索」と「自社ECへの流入」で受け止める
D2Cでショート動画を使うときに見落とされやすいのが、動画を見た人がどこへ向かうかです。ショート動画を見て興味を持った人は、その場でリンクを押すとは限らず、あとから商品名やブランド名で検索することがあります。
そのため、動画側の指標(再生数・視聴完了率・保存・コメント)だけでなく、自社側で次の変化を見ておくことが大切です。
- 商品名・ブランド名での検索数の変化(Google Search Consoleなど)
- 自社ECへの流入の変化と、流入元の内訳(GA4など)
- 検索結果や自社ECのページに、動画を見た人が求める情報(価格・使い方・購入方法)があるか
指名検索を増やす施策と測り方は指名検索を増やすにはで詳しく整理しています。動画が伸びても自社ECのページが分かりにくければ、せっかくの関心が購入につながりません。動画の企画と同じ時期に、受け皿となるページも見直しておきます。
効果は新規獲得・購入転換・継続購入の3段階で見る
D2Cマーケティング全体の効果は、段階ごとに指標を分けて見るのが基本です。
新規獲得:到達数、指名検索の変化、新規訪問者数など。ショート動画やクリエイターPRの成果は主にここに表れます。
購入転換:自社ECの転換率、カート投入からの離脱率など。サイトの使いやすさや価格・送料の見せ方が大きく影響します。
継続購入:再購入率、定期購入の継続率、解約率など。CRMとコミュニティの役割が大きい段階です。
仮に、ある期間にショート動画施策を行い、同じ期間に指名検索と新規訪問者が増えたとしても、その増加がすべて施策によるものとは限りません。同時期の広告、季節要因、価格や在庫の変更でも数字は動きます。「施策の期間中にこう変化した」という記述にとどめ、他に何が動いていたかを併記して記録するのが妥当です。
始める順番は「どこで顧客が止まっているか」から決める
6つの手法のどれから始めるかは、顧客がどの段階で止まっているかで決めます。
| 課題の状態 | 優先して見直す手法 |
|---|---|
| そもそもブランドが知られていない | クリエイターPR、広告、SNS運用 |
| 自社ECに人は来るが購入されない | 自社ECの商品ページ・購入導線、よくある疑問への回答 |
| 1回目は買われるが続かない | CRM、使い方の案内、コミュニティ |
| 顧客の声が集まらない | レビュー導線、コミュニティ、UGCの紹介 |
たとえば、認知の段階に課題がある場合でも、自社ECの商品ページが整っていなければ、集客にかけた費用が転換につながりません。新規獲得に取り組む前に、受け皿となるページと購入導線が最低限整っているかを確認しておくと、集客の効果を読み取りやすくなります。
ショート動画のクリエイターPRを少額から試す方法の一つとして、lit.link Boost!のように、案件条件を掲載して応募したクリエイターを審査し、再生数に応じた料金で発注する募集型のサービスもあります。どの手法を使う場合も、最初は小さく試し、反応の傾向を見てから規模を広げる進め方が現実的です。
まとめ
D2Cマーケティングは、自社ECを軸に、SNS運用・広告・CRM・コミュニティ・クリエイターPRを新規獲得・購入転換・継続購入の段階に割り当てて設計する取り組みです。顧客との関係を自社で持てることが強みである一方、集客と購入後の関係づくりを自社で担う必要があります。
ショート動画は、主に認知と検討の段階で役割を持ちます。動画の成果は、指名検索と自社ECへの流入という自社側の変化で受け止め、受け皿となるページも同時に整えます。どの段階で顧客が止まっているかを見極め、そこに合う手法から小さく始めてください。
参考
- Google Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート」 https://support.google.com/webmasters/answer/7576553
- Google アナリティクス ヘルプ「URL 生成ツール: カスタム URL でキャンペーン データを収集する」 https://support.google.com/analytics/answer/10917952
- 消費者庁「特定商取引法」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法等」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
よくある質問
D2Cとは何ですか?
D2CはDirect to Consumerの略で、メーカーやブランドが卸や小売店を介さず、自社のECサイトなどを通じて消費者に直接商品を販売するビジネスモデルを指します。販売チャネルだけでなく、顧客と直接つながり、購入データや声を商品やコミュニケーションに活かす考え方を含めて使われることが多い言葉です。
D2Cマーケティングと通常のECマーケティングの違いは何ですか?
大きな違いは、顧客との関係を自社で持ち続けることを前提にしている点です。ECマーケティングは売上の獲得に重心がありますが、D2Cマーケティングでは購入後の継続購入や口コミ、顧客の声を商品開発に戻す循環まで含めて設計します。モール出店と併用するD2Cブランドもあり、境界は厳密ではありません。
D2Cブランドに向いているSNSはどれですか?
商材と顧客層によって異なります。使用シーンや変化を動画で見せやすい商材はTikTokやInstagramのリール、世界観や写真での訴求が中心ならInstagramのフィード、詳しい解説や比較が必要ならYouTubeといった使い分けが考えられます。まず顧客がどの媒体で情報を探しているかを確認するのが出発点です。
D2Cでショート動画はどの段階で使うのが効果的ですか?
主に、まだ商品を知らない人に存在を知らせる段階と、検討中の人に使用感を見せる段階で役割を持ちます。購入後の段階でも、使い方の案内や顧客の投稿の紹介に使えます。どの段階を狙うかで、動画の内容と見るべき指標が変わるため、先に段階を決めてから企画します。
D2Cマーケティングの効果はどう測ればよいですか?
新規獲得、購入転換、継続購入の3段階に分けて指標を置きます。新規獲得では到達や指名検索の変化、購入転換では自社ECの流入と転換率、継続購入では再購入率や解約率などを見ます。前後比較で数字が動いても施策の効果と断定せず、同時期の他の要因と並べて記録することが大切です。
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