新商品PRの進め方|発売前・発売時・発売後のUGC設計とKPI
新商品の発売が決まったものの、発売日に向けて何をいつまでに準備すればよいのか、発売後にどう評価すればよいのかが決まらないまま日程だけが迫ってくる。新商品PRを担当する企業のマーケティング担当者にとって、よくある状況です。
この記事は、ショート動画やSNS投稿を使って新商品の認知を広げたい担当者に向けて書いています。先に結論を書くと、新商品PRは「発売前」「発売時」「発売後」の3期間に分けて、期間ごとに役割とKPIを置くと設計しやすくなります。発売前は投稿の準備と条件の確定、発売時は投稿の集中と受け皿の整備、発売後はUGCの収集と評価が中心です。どの期間でも、企業が依頼した投稿には広告であることの表示が必要になります。
この記事では、全体のタイムライン、期間ごとの作業、段階別のKPI、景品表示法や業種ごとの規制への注意点を整理します。新商品プロモーションの予算が限られている場合の考え方にも触れます。
新商品PRは発売日を中心に3つの期間に分けて設計する
新商品PRで起きやすい失敗は、発売日に投稿を間に合わせることだけに集中し、発売前の準備と発売後の評価が抜けてしまうことです。発売日を中心に、期間ごとの役割を分けて考えると抜けが見えやすくなります。
- 発売前:誰に何を伝えるかを決め、依頼先の選定、商品の提供、投稿条件の確定までを進める
- 発売時:投稿を短い期間に集中させ、PR表記と販売ページなどの受け皿を揃える
- 発売後:自然発生した投稿やレビューを集め、許諾を得て二次利用し、施策を評価する
この3期間は、それぞれ見るべき指標も異なります。発売前に売上を目標に置いても判断材料にはならず、発売後に投稿本数だけを見ても施策の効き目は分かりません。期間ごとにKPIを分けておくことが、後から振り返れる設計の前提になります。
タイムラインを1枚の表にして関係者と共有する
期間ごとの作業を1枚の表にまとめ、社内の関係者(商品担当、販売担当、法務・品質保証など)と共有します。以下は考え方を示すための例で、必要な日数は商品や依頼の規模によって変わります。
| 期間 | 主な作業 | 決めること | 段階別KPIの例 |
|---|---|---|---|
| 発売前(準備) | ターゲットと訴求の決定、依頼先の選定、日程表の作成 | 伝える内容の優先順位、使ってよい表現の範囲 | 依頼先の確定数、条件の合意数 |
| 発売前(提供) | サンプリング・ギフティング、投稿内容の確認 | 解禁日、投稿条件、PR表記、確認の手順 | 受領数、投稿準備の完了数 |
| 発売時 | 解禁日にあわせた集中投稿、販売ページの公開 | 投稿の時期、リンク先、在庫と販売条件 | 再生数・リーチ、指名検索、サイト訪問 |
| 発売後(収集) | 自然発生の投稿やレビューの確認、許諾の依頼 | 二次利用の範囲・期間・編集可否 | 自然発生の投稿件数、レビュー件数 |
| 発売後(評価) | 施策の振り返り、次回への反映 | 評価の期間、比較の方法 | 購入、リピート、指名検索の推移 |
表を作る段階で、社内の確認に必要な日数も見込んでおきます。投稿内容の確認に法務や品質保証の担当者が関わる場合、その確認日数が全体の日程を左右することがあります。
発売前は訴求を絞り、サンプリングと投稿条件を固める
伝える内容を1〜2点に絞る
新商品の特長をすべて伝えようとすると、1本の投稿で何が言いたいのかが伝わりにくくなります。誰のどんな場面で役立つ商品なのかを決め、伝える内容を1〜2点に絞ります。依頼先には、欠かせない情報と、本人の感想に任せる部分を分けて伝えると、投稿の自然さと情報の正確さを両立しやすくなります。
サンプリングとギフティングは「任意」か「依頼」かを分ける
発売前に商品を体験してもらう方法として、サンプリングやギフティングがあります。ここで最初に決めたいのは、投稿を任意とする提供なのか、投稿を成果物として依頼する契約なのかです。任意の提供では投稿の有無や時期を確約できないため、発売時の集中投稿の計画には組み込みにくくなります。投稿を計画どおりに得たい場合は、媒体・本数・期限・報酬を決めた依頼として進めます。進め方の詳細はギフティングの進め方で整理しています。
解禁日・PR表記・確認の手順を依頼時に合意する
発売前に商品を提供する場合は、情報を公開してよい日(解禁日)を決め、それより前に投稿されないよう依頼時に取り決めます。あわせて、PR表記の方法、投稿前に内容を確認するかどうか、修正を依頼できる範囲、確認の期限も合意しておきます。媒体ごとのタイアップ表示機能の使い方はタイアップ投稿ラベルの設定を参考にしてください。
投稿を広告素材として使う予定がある場合は、この段階で二次利用の条件(利用先、期間、編集の可否、追加の費用)も決めておきます。発売後に取り直すと、日程も費用も余計にかかります。
発売時は投稿を集中させ、PR表記と受け皿を揃える
解禁日の前後に投稿を集める
新商品の認知拡大では、同じ時期に複数の投稿が見られる状態を作ることで、商品名に触れる機会が重なりやすくなります。解禁日から数日の間に投稿が集まるよう、依頼先ごとの投稿予定日を日程表で管理します。すべてを同じ日に揃えるより、数日に分けて途切れないようにする方法もあります。
PR表記は投稿ごとに確認する
企業が依頼や商品提供をして生まれた投稿は、広告であることが分かるように表示する必要があります。2023年10月1日に施行された景品表示法の指定告示(いわゆるステマ規制)では、事業者が表示内容の決定に関与した投稿は、事業者の表示として扱われます。集中投稿の時期は確認の件数が増えるため、投稿ごとにPR表記の有無と位置を確認する担当者を決めておきます。
販売ページと在庫の状態を投稿内容と合わせる
投稿を見た人がたどり着く販売ページ、店頭、ECのページが、投稿の内容と一致しているかを発売前に確認します。紹介された色やサイズが在庫切れになっている、投稿で触れた価格や特典が販売ページと違う、といった不一致は、投稿の効き目を打ち消すだけでなく、表示の問題につながるおそれもあります。
発売後はUGCを集め、許諾を得て二次利用し、評価する
自然発生の投稿とレビューを分けて集める
発売後は、依頼していない利用者による投稿やレビューが生まれ始めます。商品名やハッシュタグでの検索、ECサイトのレビュー、問い合わせの内容などから、利用者がどんな点に反応しているかを確認します。依頼した投稿と自然発生の投稿を分けて記録しておくと、依頼した投稿をきっかけに自然発生の投稿が生まれたのかを振り返りやすくなります。UGCの定義や分け方はUGCとはで詳しく整理しています。
二次利用は許諾を文書で取ってから
反応のよかった投稿を、自社サイトや広告、店頭で使いたくなる場面があります。公開されている投稿であっても、企業が自由に使ってよいわけではありません。利用先、期間、編集の可否、音源の扱いを、投稿者から記録が残る形で許諾を得てから使います。自社の媒体に掲載した時点で、その掲載は企業の表示になるため、掲載する投稿の内容にも注意が必要です。
評価は期間を区切り、他の要因と分けて行う
発売後の評価では、施策の前後で数字がどう変わったかだけでなく、同じ時期に動いていた広告、販売チャネルの拡大、季節要因なども記録します。新商品は発売そのものが話題になりやすいため、施策の効果と発売の効果を切り分けにくい点に注意が必要です。
KPIは段階別に置き、売上だけで判断しない
新商品PRのKPIは、期間ごとに役割を分けて置きます。1つの数字で全体を評価しようとすると、どの段階に課題があったのかが分からなくなります。
| 段階 | 見るもの | 指標の例 | 主なデータの取得元 |
|---|---|---|---|
| 準備 | 依頼が予定どおり進んだか | 条件合意数、受領数、投稿予定の確定数 | 社内の進行表 |
| 到達 | 投稿が見られたか | 再生数、リーチ、保存数 | 各媒体のインサイト、投稿者からの報告 |
| 関心 | 商品名が検索されたか | 指名検索の表示回数・クリック、サイト訪問 | Google Search Console、アクセス解析 |
| 行動 | 購入や問い合わせにつながったか | 購入、カート追加、店頭での問い合わせ | EC管理画面、販売データ |
| 波及 | 自然な投稿が生まれたか | 自然発生の投稿件数、レビュー件数と内容 | SNS検索、ECのレビュー |
ここで説明のための仮定の計算例を示します。実際の料金や実績を示すものではありません。発売時に依頼した投稿が10本、合計の再生数が50万回だったとします。発売後4週間で、商品名での指名検索のクリックが施策前の4週間より1,200回増え、自然発生の投稿が30件確認できたとしても、同じ時期に店頭での取り扱いが増えていれば、その増加をすべて投稿の効果とは言えません。数字と一緒に、同時期に動いていた要因を並べて報告します。
指標の設計や、施策前後の比較期間の置き方はインフルエンサー施策の効果測定で詳しく扱っています。
表示の規制と業種ごとの規制を事前に確認する
新商品PRでは、投稿の表現が企業の表示として扱われる場合があるため、依頼の段階で規制を確認しておきます。ここでは一般的な考え方を整理します。個別の表現が問題ないかは、最新の法令やガイドラインを確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
景品表示法:広告であることの表示と、内容の正確さ
景品表示法では、依頼した投稿に広告であることを明示することに加えて、商品の品質や価格などについて、実際よりも著しく優良・有利であると誤認させる表示が規制されています。「他社より優れている」「一番人気」といった比較や順位の表現は、根拠となる資料がなければ使わないよう依頼先にも共有します。
業種ごとの規制:化粧品・医薬品・食品など
化粧品、医薬部外品、医薬品、医療機器などの広告には、薬機法による規制があります。食品では、健康の保持増進の効果などに関する誇大な表示が健康増進法で規制されています。依頼した投稿の中で効果や効能を言い切る表現が使われると、企業の表示として問題になるおそれがあるため、使ってよい表現と避ける表現の一覧を依頼先に渡し、投稿前に確認する流れを作ります。化粧品の表現の確認手順はコスメのインフルエンサーPR、食品は食品のインフルエンサーPRもあわせてご確認ください。
予算が限られるときは小さく試して広げる
新商品プロモーションの予算が限られている場合は、最初から多くの依頼先に広げるより、少数の依頼先で投稿内容や反応を確かめてから広げる進め方が扱いやすくなります。発売前に数名へ依頼して訴求の伝わり方を確認し、反応のよかった訴求を発売時の依頼内容に反映する、という順番です。少額での計画の立て方は少額予算のインフルエンサー施策、自社ECを中心に販売する場合のショート動画の使い方はD2Cマーケティングとショート動画で整理しています。
依頼先を集める方法の一つとして、lit.link Boost!のように、投稿条件やPR表記、期間などの案件条件を掲載し、応募したショート動画クリエイターを審査して発注する仕組みもあります。どの方法でも、解禁日や表現の範囲などの条件を依頼前に決めておくことが前提です。
まとめ
新商品PRは、発売前・発売時・発売後の3期間に分けて、期間ごとに役割とKPIを置くと設計しやすくなります。発売前は訴求を絞り、サンプリングやギフティングの性質、解禁日、PR表記、確認の手順、二次利用の条件を固めます。発売時は投稿を集中させ、販売ページや在庫の状態を投稿内容と揃えます。発売後は自然発生の投稿を依頼した投稿と分けて集め、許諾を得てから二次利用し、他の要因と分けて評価します。
表示の面では、依頼した投稿に広告であることを明示するだけでなく、景品表示法や業種ごとの規制を踏まえた表現の範囲を依頼先と共有しておくことが欠かせません。
次に読む記事として、商品提供の進め方はギフティングの進め方、施策の評価方法はインフルエンサー施策の効果測定をご覧ください。
参考
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
- 消費者庁「景品表示法」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
- Instagramヘルプセンター「ブランドコンテンツについて」 https://help.instagram.com/116947042301556
- TikTokヘルプセンター「ブランドコンテンツの開示」 https://support.tiktok.com/ja/using-tiktok/creating-videos/disclosing-branded-content
- Google Search Consoleヘルプ「検索パフォーマンスレポート」 https://support.google.com/webmasters/answer/7576553
よくある質問
新商品PRはいつから準備を始めればよいですか。
発売日から逆算して、依頼先の選定、商品の発送、試用、投稿の確認に必要な日数を確保できる時期に始めます。必要な日数は商品や依頼の規模で変わるため、各工程に余裕を持たせた日程表を先に作ることをおすすめします。
発売前に商品を提供して投稿してもらうことはできますか。
可能です。ただし情報を公開してよい日(解禁日)を決め、それより前に投稿されないよう依頼時に取り決めます。企業が商品を提供して投稿を依頼する場合は広告にあたるため、PR表記などで広告であることを明示してもらいます。
発売前に集めた投稿はUGCと呼べますか。
企業が依頼や商品提供をして生まれた投稿は、自然発生したUGCとは扱いが異なります。社内でUGCと呼ぶ場合も、依頼した投稿と自然発生の投稿を分けて記録し、表示や二次利用の条件もそれぞれ管理します。
新商品PRのKPIは何を置けばよいですか。
期間ごとに役割が異なるため、段階別に置きます。発売前は投稿の準備状況、発売時は到達や指名検索、発売後は自然発生の投稿件数やレビュー、購入などが目安です。売上の変化は他の施策や季節の影響も受けるため、施策だけの効果と断定しないようにします。
化粧品や食品の新商品PRで気を付けることはありますか。
化粧品や健康食品などは、景品表示法に加えて薬機法や健康増進法などの規制が関係する場合があります。依頼した投稿の表現も企業の表示として扱われうるため、使ってよい表現の範囲を事前に共有し、投稿前に確認する流れを作ります。
この記事は「インフルエンサーマーケティングとは?始め方・費用・効果測定」の関連記事です。
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